一年後の大洗より

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大洗の阪田先生から「一年後の大洗より」という詩をいただきました。

 
 

  一年後の大洗より

 
あれから一年が経ちました
あっという間の一年でした
あの日、地震で屋根瓦が崩れ、家屋が倒壊して、途方に暮れた人たち
あの日、津波で船が流され、仕事を失った人たち
あの日以来、精神的に不安定になって、うつになった人たち
停電になって、コンピュータが動かず、テレビも見れず、何が何だかわからず、途方にくれた私
まず、学校の体育館に行って、寒さに毛布にうずくまって、明日の薬を心配していた患者さんたち
私は、診療所にある薬を段ボールに突っ込んで体育館にいきました
とりあえず、赤のタートルネックを着て少しでも明るく振舞って
それでも、ほとんどの患者さんたちは途方に暮れ、不安におののいていました
地震が過ぎても、余震の恐怖が払しょくされずにいた街
 
そして夏がきました
中古の船を買ってようやく漁を始めても
漁礁が津波の土砂で埋まってしまって、魚がいなくなってしまいました
漁港を復興しても、市場にお客が来ない
ようやく捕ってきた魚は放射能の風評被害で売れません
活気を取り戻せない街
 
そして、冬がやってきました
数十年ぶりの寒い冬
もう春が来ないのでは、と想ってしまうほどに
打ちのめされて、どん底に陥ってしまった街
 
桜川沿いを散歩していると桜の木々が芽吹いてきています
見上げると青い空に木の枝が伸びていて、そして空に向かって目いっぱい芽吹いています
「これから、花をさかせます」とでも言いたげに
つくばの洞峰公園を散歩していたら草花が咲き始めていました
名も知らない、小さな草花
春はきた
 
あれだけ打ちのめされても、人々の顔に、もう二度とみられないのではないかと思っていた笑顔が戻ってきました
おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、おかあさん、そしてこどもたち
春の陽気に少しずつ前進しています
一歩ずつ、一歩ずつ、歩んでいます
被災地の街
一人一人が手に手に絆を携えて歩んでいます
明日に向かって
 
さかた
 
「さかた医院」は大洗町にあって、津波がすぐ近くまで迫り
医院の設備にも、地震で大きな被害がありました。
 
 

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