京王百貨店新宿店は60歳以上の「シニア御用達」のデパートとして有名だ。
たとえばシニアは加齢による体型変化で上半身と下半身でサイズが変わってしまうことがある。そのため婦人衣料品売り場ではシニア体型に合わせ、上下同じデザインで違うサイズの商品が買えるようにしている。
シニアが相談しやすいように店員も若い女性よりベテランをそろえているほか、買い物に疲れたらすぐに休憩できるようにいすをたくさん並べている。
同店は20年ほど前にシニア戦略に舵を切り、商品やサービスをシニア向けにすることで、シニアの心をつかみ、低迷する百貨店業界における勝ち組とされてきた。
かつての60代は80代に
しかし、近年は京王の勝ちパターンに変化が生じている。理由は3つある。
第1の要因は中国人観光客を中心とした”爆買い”ブームをつかみきれなかったことだ。伊勢丹新宿本店や隣の小田急百貨店は豊富なラグジュアリーブランドの品ぞろえを武器に爆買い需要をしっかり取り込んだ。一方の京王新宿店は、低価格品を中心に訪日客向けの売上高は伸びていたものの、小田急や伊勢丹の勢いにはかなわなかった。
その後、爆買いブームが消え去ると百貨店業界は低迷期に逆戻りした。京王は爆買いの影響がもともと小さく、「インバウンドの売り上げはむしろ今も増え続けている」(京王百貨店広報)だけに、いち早く回復するとみられていたが、ほかの百貨店同様、厳しい状況が続く。
第2の理由は量販専門店の台頭による衣料品の落ち込みだ。経済産業省の調査によれば、百貨店における衣料品販売額はピークだった1991年の6.1兆円から、2016年には2.9兆円と半分以下に減ってしまった。年代別で見ると30歳未満や30代の購入額が著しく減っている。
シニア層はどうか。同じく経産省の調査によると60~70代の百貨店での衣料品購入額は2004年から2014年にかけて2~3割減っている。シニア層に強い京王といえど、シニアの百貨店離れという流れには抗しきれないようだ。
第3の要因は長期的なトレンド。つまり顧客の高齢化だ。20年前に60代だった顧客は現在80代。来店頻度や購買力に陰りが見えてきた。現在の60~70代に訴求するだけでなく、40~50代というシニア予備軍をしっかり囲い込んでおかないと、京王の強みであるシニア戦略が将来崩壊してしまう。
そこで京王百貨店は新宿店の改装に動きだした。狙いは2つ、客層の拡大とシニア戦略の強化だ。
2016年12月、1階メインエントランス横という百貨店の顔ともいうべき場所に、海外腕時計の「ロレックス」がオープンした。以前は化粧品売り場だった場所だ。新宿という地の利を生かし、「12月、1月の2カ月で同店の時計のオーバーホール件数は日本一になった」(広報)。オーバーホールとは中古品を分解し、清掃・再組み立てを行い新品状態に戻すこと。ロレックスユーザーという上客をつかんだことで、今後の高額品販売に期待が持てる。
元あったロレックスが抜けた6階の時計売り場では「セイコー」「シチズン」など国産ブランドの強化を行った。「カシオ」コーナーでも「G-SHOCK」「BABY-G」など人気ブランドのラインナップを拡充。こちらは若い世代を中心とした客層の拡大をもくろむ。
ロレックスの出店に合わせ、1階の化粧品売り場にも改装を施した。スキンケアブランドを強化したのだ。肌をよい状態に保つスキンケアはとりわけシニア層の関心が高い。が、肌の状態によって手入れ方法が変わるためカウンセリングが不可欠でもある。シニア向けに始めた店頭でのカウンセリング体験であるが、40~50代への訴求も狙っている。
本丸のシニア売り場もリニューアル
8階のレストラン街も2016年3月にリニューアルオープンした。仕事帰りの夜需要を取り込むべく、個室や半個室の数を増やしたほか、アルコールメニューの強化にも取り組んだ。こうした施策の結果、2016年4~11月に前年比マイナスが続いた新宿店の店頭売上高は、12月、1月、2月と3カ月連続で前年同月比プラスとなった。
3月16日には、2~4階の婦人服売り場が改装オープンする。4階には同店の象徴ともいえるシニア向けが集積。「衣料品は伸び悩んでいるが、雑貨と化粧品は堅調に伸びている」(広報)ことから、ほかのフロアの売り場からステッキ、ウィッグ、バッグなどの雑貨を移し、エイジングケアやサプリメントなどの店舗もオープンさせた。その結果、雑貨や美容・健康の売り場シェアを4%から14%へと大きく広げた。
また、40~50代がターゲットの3階では管理職など働く女性向けのファッションを強化した。さらに若い世代向けの2階は、やはりオフィス向けファッションを強化するとともに、4階と同様に非衣料シェアを2割から3割へ引き上げた。
2020年以降には小田急やJR東日本も含めた新宿西口再開発という大型プロジェクトも控え、完成すれば新宿西口の装いは一新される。変化の激しい時代の中で京王百貨店は生き残りを懸けた模索を続ける。
京王関係のニュースが続きますね
先日、京王線に乗って
高幡不動へ行ったせいかな? (^_^;)