キャリーバッグ

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tasclapimage_1022「キャリーバッグを引いて歩いていた人が目の前でいきなり止まり、バッグで転んでしまった」
「バッグを引いてバカンスに向かう子ども連れの傍若無人な振る舞いが堪えがたい……」
キャリーバッグをめぐるトラブルは、日本だけでなく世界のあちこちで起こっているようだ。
ところが、日本以外の国々で「キャリーバッグを持っての移動の際は周りの人々に気を配って」といったアナウンスや張り紙などに出合うことはまれだ。
はたして、外国ではどんなトラブルが起きているのだろうか。
英国で旅行用バッグをオンライン販売するローリング・ラゲージ社では、キャリーバッグやスーツケース、大型のリュックサック(バックパック)による公共交通機関でのトラブルについて、詳細にわたる調査を行っている。
この統計を使って、英国など欧州におけるキャリーバッグを取り巻く問題について分析してみよう。
trav05キャリーバッグには近寄らないです
 テロの爆弾が入ってるかもしれないしね
特にエスカレーターの上の方にいたら
 なるべく階段にします  (^_^;)
 

 

▲キャリーバッグはこのような持ち方が「比較的安全」と奨励されている

 

7割以上がキャリーバッグで嫌な思い

キャリーバッグの取り扱いをめぐっては、英国人も頭を痛めている。
9割以上の人々は、駅や空港などでキャリーバッグなどを持って歩く際、「周りの人々に気を配る」としているが、一方で7割以上が「キャリーバッグで嫌な思いをしたことがある」と答えている。
同様のアンケートを日本でも行ったら、似たような結果が出るのではないだろうか。
また、トラブルが最も多く起きる場所について、6割以上の人々が「鉄道駅と列車内」と認識しているほか、4割の人々が空港のターミナル内と答えている(場所については複数回答)。
この統計ではさらに、英国人が感じる「キャリーバッグを持つ人のマナーがひどい国」という数字も掲げられている。
それによると、ワースト3の国としてスペイン、フランス、米国が挙げられているほか、それに次いでドイツとギリシャがよくない、ということだ。
では、どんなタイプの旅行者がキャリーバッグ絡みの問題を多く起こしているのだろうか。
これについては、調査対象者の6割以上が「小さな子ども連れの家族」と回答している。
旅行中の親は子どもの世話で手いっぱいで、とても他人への気遣いまで頭が回らない、ということなのかもしれない。
一方で、1割ほどの人々は「自分自身もバッグを乱暴に扱い、他人に迷惑をかけた経験がある」と後悔。
その理由として「乗り物の出発時間が迫っていたため」という声が最も多い。急いでいるときは周りのことなど気にしてはいられないだろう。
最も怖いのは、「地下鉄駅エスカレーターでのバッグの転落」だ
たとえば、ロンドンの地下鉄駅の多くは地下深くに設けられているが、エスカレーターはあってもエレベーターがない。
大きなスーツケースをエスカレーターに載せて上へ下へと運ぶ旅行者をたくさん見掛けるが、手が滑ったりするなど何かの拍子にバッグが転がり落ちたら、ケガ人が出ることは必至だ。
今のところ、幸いなことに重大事故が起きたことはないのが救いといえようか。
 

   ▼これは許せない、荷物を運ぶ人の行為

1. キャリーバッグを転がす人が、なんの前触れもなく、突然人混みで停止する。

2. 駅や空港でキャリーバッグを持って歩いている途中、立ち止まって「セルフィー」を撮る。

3. キャリーバッグのキャスターで足を踏まれる。

4. 混み合う電車でリュックサックを背負ったまま乗ってくる、あるいは車内で下ろさずにいる。

(ローリング・ラゲージ社の調査による)

 
2輪キャスターのバッグを真横で引くのは無理
キャリーバッグを引きずらず、自分の体に引きつけて運ぶことができればこうしたトラブルの多くは避けられる。
しかしキャリーバッグの作りによっては、車輪が2つしか付いていないものもある。
これは構造上、体に寄せた状態でバッグを引っ張るのは困難で、どうしても引きずる動きしかできないことになる。

これが、一般的な飛行機に預けられる最大サイズのスーツケースとなるとかなりの幅を取る。
外国人旅行者の中には、平気で両手に2つのバッグを持って引っ張るツワモノもいるが、そうなると2m近くもの幅を食う。
どう考えても、日本のラッシュアワーの駅では「邪魔もの」といわざるをえない。
日本では、キャリーバッグの運搬について「できるだけ自分に寄せて運ぶように」と奨励されている。
そんな背景もあり、自分の真横で直立させた状態で転がして運べる「キャスター4輪付き」のバッグが多く売られている。
このタイプだと、バッグを後ろに引きずらずに移動できるので、周りの人への影響が最小限で済む。
だが、キャスター4輪付きキャリーバッグが2輪のものより優れているか、といえばそうでもない。電車の床に置くと、予想外の方向へと勝手に転がってしまうのだ。
バッグのキャスターの滑りがよいと、電車の床を転がり、他の乗客にぶつかるといったトラブルも実際に起こりうる。
思うに、「周りの人々に迷惑をかけないために、体に寄せて引ける」ように作ったはずの4輪付きキャリーバッグが、実は電車の中で転がってトラブルを起こすのでは本末転倒だ。
あらためて4輪キャスターのキャリーバッグを引いている人の動きをじっくり観察してみると、意外な問題が浮かび上がってくる。
荷物が軽くて、さほど急いでいないときは鉄道会社などが奨励しているように、体の真横に押すようにして運ぶ。
しかし、早足で歩いている人は2輪キャスターのバッグと同様、引きずるような感じとなり、バッグは体の真後ろに回ってしまう。
 
バッグが視界に入らない人がいる?
国民生活センターが配布している「キャリーバッグによる事故」という資料がある。
これには、さまざまな事故事例が書かれており、前述の英国での「困った例」と同様、「前を歩いていた人が急に停止、その人が引いていたキャリーバッグで足を取られた」といったケースがその一例として掲げられている。
前の人と同じペースで歩いていて、いきなり止まられてはつまずくのも当然だ。

しかし、同資料で紹介されている「新幹線を降りたとき、前方の乗客のキャリーバッグに右足を取られて転倒した」「繁華街を歩いているとき、隣を歩いていた人が引いていたキャリーバッグがぶつかり、転んでケガをした」といった事例では、バッグを引いている側にまったく過失がないとは言わないまでも、「前を歩く人が引いているキャリーバッグが、ケガをした人の視界に入っていなかったのではないか?」という疑いを感じる。

筆者は日本を訪れたことがある英国人のスミスさん(仮名)からこんな話を聞いたことがある。
「駅構内でしばらく立っていたら、僕のスーツケースに人がぶつかってきて転んだ。あんな大きなバッグになぜ気がつかなかったのだろうか? 通路をふさいでいたわけでもないのに……」
日本人の「周りに目を配る能力」が著しく欠けているとは思えないが、「バッグが足に当たるか引っかかるかしたら、自分が転ぶかもしれない」といった危機意識を感じないのは不思議に思えてならない。
新幹線へキャリーバッグやスーツケースなど大きめの荷物を持ち込むとき、どこに置いたらいいか悩む人が多いことだろう。荷物棚に置こうにも「持ち上げる力がないから」と足元に置いたままの乗客も少なくないようだ。
自分が窓側に座っているときに、通路側の乗客が大きなバッグを足元に置いたまま居眠りでもされたらどうなるだろうか。トイレに行きたくなったときに、その人を起こすのははばかられる。
かといって、自分の目的駅に着いたときには、その人をたたき起こしてバッグを動かしてもらわないと出られない。
窓際に座っていて、通路側にバッグを置いて座ろうとする乗客を見て、「その荷物を上の棚に載せましょうか?」と声かけするような人はどのくらいいるだろうか。
「通路側と窓際と替わりませんか?」という人がいるとも思えず、やむなく窓側の乗客は「しばらくの間は辛抱」ということになるのだろう。
 
誰が誰を思いやるべきなのか?
さて、前述のスミスさんは日本でこんなことも経験したという。
「駅でスーツケース2つを引いて歩いていたら、正面から歩いてきた人が真っすぐ僕のほうに向かってきたんだ。普通の感覚なら、僕が重いものを持って引いているのが見えたら右か左かによけてくれると思うんだけど、ぜんぜんお構いなしにどんどん僕のほうに向かってくる。これではぶつかると思って、いったん止まってスーツケースから手を離して、最後は僕がよけた。全然周りのことが見えないのか、それとも単に意地悪なのか……」
同氏はまた、日本に行ったことのある女性スタッフの話として、「日本人はドアを開けて待ったりしてはくれない。荷物で両手がふさがっているときくらい助けてくれるかと思ったらそれもしない」とグチっていた。
訪日客が増えているから、温かく「おもてなしの心」で対応するべきだ、と主張するつもりはない。
確かにギリギリのスペースでしのぎ合っている超混雑の通勤電車に「大きなスーツケースを持って乗ってこられるのは許せない、邪魔だ」という考えも理解できる。
しかし、明らかに重い荷物を運んでいる人を前に、目に入らないかのようなリアクションを取るのは決してよいことではないだろう。
キャリーバッグを取り巻く事故について、鉄道運営会社などがことさらに注意喚起しても、依然発生しているのは嘆かわしいことだ。
持っているほうがいけないのか、それとも周りを歩く人々の注意力が不十分なのか。
利用者それぞれのちょっとした気配りがあれば、キャリーバッグをめぐる問題の多くは解決しそうな気がするが、どうだろうか。
 
 

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