▲ラゾーナ川崎プラザ
川崎というとあの事件を思い出してしまいますが
実際の犯罪件数は、それほど多くないんですね
(^_^;)
5月に刊行された衝撃的タイトルのミステリー「殺人都市川崎」が、神奈川県内で話題だ。
舞台は、すさみきった底辺の街として描かれた川崎市。
出版前に不幸に見舞われた地元出身の著者の、生前の率直な“川崎いじり”がじわじわと読者の心をつかんでいるようだ。
作品では、市内の少年少女が20年前の未解決殺人事件を知る。
事件の生き残りや、犯人とされる“伝説の殺人鬼”に肉薄する中、新たな殺人が次々に起きる――。
川崎大師や複合商業施設「ラ・チッタデッラ」、ラゾーナ川崎プラザなど実在の場所が臨場感を出す。
実は、人口1000人あたりの川崎市の刑法犯認知件数は、全国20政令市で横浜市(4・7件)に次いで2番目に低い5・0件。
1位の大阪市(16・5件)の3分の1以下だ。
それでも、埼玉県をおちょくってヒットした映画「翔(と)んで埼玉」を思わせる川崎へのネガティブな扱いは容赦ない。
<川崎はハロウィンが盛んだ。地獄みたいに治安が悪いから、
自虐的に化け物の格好をしたがるんだろう>
と主人公の少年。
川崎区から武蔵小杉エリアのマンションに越したヒロインの母が、
<あんな治安の悪い街、引っ越して正解!>
<川崎のことは忘れなさい。それがあなたのためなの>
と言い聞かせる――。
著者の浦賀和宏さんは1998年に19歳でデビュー。
2001年の「彼女は存在しない」がベストセラーになるなど独自の世界観で根強いファンを持つが、今年2月、脳出血のため41歳で亡くなった。
本作は推敲(すいこう)の段階だった。
浦賀さんを20年以上担当してきた角川春樹事務所の編集者・永島賞二さん(55)は当初出版をためらったが、ファンからの「もっと読みたかった」との声を知り「遺作を届けたい」との思いに至った。
浦賀さんの母親も同意し、5月15日にハルキ文庫から刊行した。
コロナ禍で一時休業していた丸善ラゾーナ川崎店(幸区)は、営業を再開した5月29日からの1週間の文庫本売り上げで1位に。
コロナ禍で注目されたフランスの古典小説「ペスト」を2位に抑えての快挙に、同店の店員(38)は
「コロナ禍だからこそ、エンターテインメントが求められていると気付かされた。
川崎いじりも、オブラートに包んだら嫌みだが、直接的なのでジョークになる」
と語る。
有隣堂アトレ川崎店でも現在まで毎月2桁の数が売れているという。
永島さんは、浦賀さんに本作の構想を明かされた際、市民の怒りを懸念したという。
だが市内などの書店に聞くと、「面白い」「地元出身、在住だった浦賀さんの作品ならでは」と存外に好評だった。
同事務所営業部の真壁徹さんも「川崎の書店員さんたちが前のめりになってくれたのがうれしい。地元を盛り上げたいという思いを感じた」と喜ぶ。
永島さんは「どこに仕掛けが隠れているかわからないのが浦賀作品の魅力。生前、ネタバレを何より気にしていたので詳しく語れないが、ぜひ地元の人たちにも楽しんでもらいたい」と力を込める。