
いま自分が見ている世界は、実は
水槽に浮かんだ脳が見ている夢
なのではないか?
との説は、巷でよく言われる思考実験の一つ
このような考えを元に、実存主義やエントロピーの概念を解説したビデオを、科学系YouTubeチャンネルKurzgesagtが公開しています
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世界の実在や人間の認識に関する議論で必ず出て来る
「水槽に浮かんだ脳」仮説

日常とか常識を余り疑わないで生きている方々(いわゆる常識人)には奇妙な説に見えるのかもしれませんが、哲学好きには魅力的な仮説です
私も哲学好きなので、この仮説には余り違和感がありません
いやむしろ、かなり実感をともなった感覚(世界観)かもしれない
いま私の周囲に広がっている世界(宇宙)や、私の周囲にいる人たち、ビッグバンに始まると言われているすべての宇宙や地球や人類の歴史
これらはすべて、私の脳が創り出した夢(幻想)なのではないか?
もし私がいま死んだら、世界(宇宙)も時間も
実在性を失って消滅し、すべては無に帰する
これを「死後も夢は続く」と考えれば、霊魂の不滅とか死後の世界につながる
このような仮説は過去においても、唯心論的な哲学や宗教で唱えられたりしてきました
いま科学の最先端の理論物理学者などでも、この仮説に魅力を感じる人が増えていて、一般の人たちの間にも共感が広がっているようです

これとは少し違うかもしれないけど、
心理学者・岸田秀「唯幻論」ゆいげんろん
というのがあって、これも非常に面白い
岸田秀は高校生の頃から原書(ドイツ語)でフロイトに親しんで(のめりこんで)いました
かなりの変人(天才肌)ですね
彼の主著「ものぐさ精神分析」は、
岸田流「唯幻論」で脚色されたフロイト哲学(精神分析)
の入門書で、非常に読みやすいオススメ本です
私は若い頃にこの本に出会い、余りの面白さにグイグイ引き込まれ、正続2冊計800頁余りを、一晩徹夜で読み明かしたことがあります
フロイト系にのめりこむ人は、心に何らかの傷(トラウマ)をかかえている場合が多いようです
逆に、生育環境が良くて、心にまったくワダカマリの無い、大きな悩みや心理的衝撃もなくスクスク育った人には、ちっとも面白くないかもしれません
この本は要するに
この世はすべて幻想である
人間は本能の壊れた動物である
と主張し、その立場から人間行動や世界の歴史を説明しています
なんか、信長の好んだ「敦盛」(あつもり)を思い出しますね
人間五十年、化天の内を比ぶれば、夢幻のごとくなり
一度生を受け、滅せぬ物のあるべきか
例えば、ある高校生が必死に勉強していて
あの大学に合格できたら、きっと
素晴らしい人生(毎日)になるだろう!
と考える
しかし実際に合格して憧れの大学に入学すると、うれしくて舞い上がるのは、せいぜい1か月くらい
やがて現実の人生(毎日)が期待したほどのものでなかったことに気付き、中には幻滅して五月病に陥る人も出てくる
そして大学卒業が近づくと、
あの会社に採用されたら
きっと素晴らしい人生(毎日)になるだろう!
と考え、さらに
あの人と結婚できたら・・・
課長になれたら・・・
自分の家が持てたら・・・
でもそれらはみんな夢(幻想)に過ぎず、夢が実現すれば、やがて必ず幻滅する
もっと厳しく言えば、自分がおかれている現状(いまここ)を否定して、夢の世界に逃げるという意味で、現実逃避の一種かもしれない

なんだか夢も希望も打ち砕くような悲観的な哲学ですが、これを完全に否定し切るのは難しい
俗に「悲観哲学」と言われているショウペンハウエルの考え方も、これに近い
もしかすると遺伝子(DNA)が、人間(個体)の行動力(繁殖力)を高めるために、人間の脳に「夢を持つ」という特殊な機能を持たせたのかもしれません
もっと正確に言えば、そんな「夢を持つ」という特殊な脳機能を、たまたま突然変異か何かで身に付けた個体が、生存競争に打ち勝って子孫を増やしてきたのかも
そうかと言って、簡単に「夢を持たない方がいい」などとする訳にもいかないのが、人生の難しいところ
岸田秀さんは現在、1933年生まれの89歳
余り将来に夢を持たない方が長生きできるのかもね
(^_^;)



