左:中澤沙耶・女流初段(24)年上だけど「妹弟子」
右:藤井聡太二冠(18)
8月20日、将棋の藤井聡太棋聖が木村一基王位(47)に挑戦する第61期王位戦第4局の2日目が行われ、藤井棋聖が勝利。
7番勝負を無傷の4連勝で制して王位を奪取。
史上最年少の18歳1カ月での2冠&八段昇段を達成した。
そんな藤井棋聖の秘められた素顔を、同門の女流棋士に聞いてみると……。
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「実はまだ、お祝いを伝えられていないんです」
と言うのは、藤井聡太二冠の「妹弟子」中澤沙耶・女流初段(24)。
「王位戦もありますし、他の棋戦もお忙しい。
こちらから連絡するのは憚られるというか……」
中澤女流初段は、棋戦の優勝経験も持つ若手ホープの一人だ。
5年前、19歳になる年でのプロ入りを機に、杉本昌隆八段に入門。
その3年前に10歳で入門していた藤井棋聖と「きょうだい弟子」となったのである。
もっとも、出会いはずっと以前に遡るそうで、
「実は兄弟子が幼稚園の頃から知っているんですよ」
と中澤初段が続ける。
「将棋教室の合宿で一緒になったんです。当時から詰め将棋を解くスピードが尋常ではなかった。100問あって、小5の私がまだ20問も残っていたのに、兄弟子はとっくに解けていた。“えっ”という感じですよ。その後、研修会で顔を合わせるようになりましたが、その時も、ノートに自作の詰め将棋を書いて、見せて回っていました。“感想教えて”って言われても、難しくて全然解けなかった」
と笑う。
「小学生当時は、大の負けず嫌いで、負けると泣き出しちゃったり、黙りこくったり。相手が困って“どうすればいい?”と私のところに相談に来るほど。最初は平手で指していましたが、私が高校生くらいで追い越されてしまいましたね」
その後、藤井棋聖は中3で史上最年少プロ棋士に。
そして瞬く間にトップ棋士の一人となり、あの羽生善治・永世七冠を上回るペースで勝ちまくっているわけだ。
幼少時の2人(写真・本人提供)→
そして同門として再び出会った二人。
私生活はどうなのか。やはり女性の影が気になるが、
「“妹”の勘ですが、彼女はいないと思いますよ」
と言う。
「去年、師匠の八段昇進のイベントの時、新聞社さんからツーショットが欲しいと言われて撮ったことがあったんです。
でも、兄弟子の表情が硬くて、何とかしようと“彼女いるの?”と聞いてみたら、
恥ずかしそうに“いないです”って……。何か可愛かったですね」
現在、棋聖は高校3年生。将棋に学業にこれだけ忙しければ、「彼女作り」はやっぱり難しいということか。
「食べ物は、麺類が大好き。名古屋に行きつけのラーメン屋さんがあるそうです。
苦手なのはキノコ。今年の一門の新年会で鍋を囲んだ時は、
姉弟子が除いてよそってあげていましたよ」
また、
「今はそうでもないですが、以前は忘れ物が多かったですね。
扇子とか巾着といったレベルじゃなく、対局場に
ランドセルとかリュックをそのまま置いてきちゃうんですよ。
最近話した時も、話題は『24』とか『将棋ウォーズ』とか、オンライン将棋のこと。
頭の中はいつも将棋でいっぱいなんだと思います」
現在は王位戦にも駒を進め、この夏にも「二冠」を窺う藤井棋聖。
「昔から知っているから、今でもつい、身内の席では、
“聡ちゃん”とか“聡太くん”とか呼んじゃう時もありますが、
今やタイトルホルダー。別の呼び方を考えなくちゃ……。
どうしたらいいですかね」
とまるで「姉」のような笑顔で「兄弟子」を語る中澤「妹」弟子。
快進撃は、こうした一門の支えもあってこそ、か。
「週刊新潮」2020年8月13・20日号 掲載