読むのは二度目(前回は大学生のころ)
育ちの良い若奥様「節子」の不倫話で、ストーリーは単純なのだが、心理描写の美文章には引き込まれる
現実には下品になりがちな不倫を、徹底的に美しく(道徳的という意味ではない)描いている
不倫実行中の人が読めば、自分たちのしていることが薄汚いことではなく、美しく高貴なことであるとの自覚を深めるかもしれない
それを三島は「美徳」と呼んでいる
まさにニーチェだ
節子を取り巻く男たち(愛人、夫、息子、父)は、定型化していて描写に奥深さはなく、ひたすら節子の心理だけを追求している
不倫が珍しくもない現代から見ると、時代の違いを強く感じるが、それが逆に今読むと新鮮さにもなっている
不倫における女の心理を男が書いたというところが、まさに文学なのだが、女性から見たら不自然な描写も多々あるのかもしれない
本書を読んだ宇野千代から三島由紀夫は『あなたはよろめいたことのない人ね』と笑われたそうだ
「恋愛において、女は常にプロだが、男はアマチュアである」と誰かが言っていたなぁ
月丘夢路主演で映画にもなっている (^_^;)