メンタルヘルス

読書 不幸になりたがる人たち

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著者は都立松沢病院の精神科医

著者自身が前書きで「読後感は気分の悪いものになるであろう」と予言している

それは目が覚めたときに枕をひっくり返したら、枕の下に大きなムカデ(ゴキブリでもいい)を発見したような不快感だと著者は言っている

自殺、心中、自己破壊(肉体、精神)、殺人、死体損壊、放火、ストーカー等々、いろいろと常軌を逸した人々の、実にグロテスクな事例と、その背後にあるであろう「心の闇」が提示されている

しかも本書は、それらの人々の「心の闇」には、著者自身と共通のものがあるのだ、だからグロテスクに感じるのだと主張している

つまり、この本を読んでいる読者にも、共通のグロテスクな深層心理があるのだと暗に示唆している

シロアリに食い荒らされてボロボロになった家でも、崩壊する直前までは誰も気付かず、普通の家として見られている

人の心もこのようなもので、たとえ崩壊寸前であっても日常生活は普通に送れるのが、人間精神の「普通」なのだと著者は言う

そして、だから人の「心の闇」は恐ろしいのだと言う

その恐ろしさは、自分の心の中にも同じ闇が潜んでいることへの自覚によるようだ

副題にあるような、自虐指向とか破滅願望という言葉はよく目にするが、そのリアルな姿を見せつけられると、確かに余り気分の良いものではない

しかし、非常に興味を惹かれるのは、それが「他人事ではない」ことを深層心理が自覚しているからかもしれない

世の中には、猟奇的な事件を専門に扱っている雑誌や書籍が少なくないのも、そのせいだろう

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最近でも、SNSにおける匿名の誹謗中傷にさらされていた最中に自殺した22歳のスポーツ選手(木村花さん、→)について、「だからSNSの無責任なコメントは法的に取り締まるべきだ」といった主張がなされている

別にSNSの誹謗中傷を擁護するつもりはないが、「誹謗中傷→自殺」という因果関係を当然のことのように報道しているマスコミの論調には、思考停止のようなものを感じる

人間とは、赤の他人からの誹謗中傷だけで自殺するほど、そんなに弱い生き物なのだろうか?

自殺という具体的な行動の背後には、周囲からは計り知れない「心の闇」や心理的に微妙なバランスがあり、それを多少でも理解するカギを、本書は含んでいる

こんなことを言えば、それは心の強い人間の暴論だ、などと鬼の首を取ったように非難(誹謗中傷)する「正義の人」が、ウジャウジャわいて出るのが予想されるけどね

とにかく現在の日本では、自分を被害者の立場に置けば「絶対善」であって、これに反論することは絶対に許されないような歪んだ空気があるように感じる

それは、被害者であることに対する依存症のようなものであると本書は指摘する

(^_^;)

 

読書 ブッダの集中力

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著者は、1945年スリランカ生まれで、1980年に来日、駒澤大学で博士を取得し、その後は仏教伝道と瞑想指導をしている

大量の著書があり、アマゾンで調べただけでも、200冊くらいありそう

これだけの本が売れているということは、何かあるのかな?と思ったのが読み始めた動機

仏教は科学であって宗教ではないと主張する

特にキリスト教などの一神教は、科学的根拠も無いことを信じる愚かなものとしている

基本となる考え方は、ブッダによる原始仏教に置き、中国の大乗仏教や日本の鎌倉仏教とは異なる

科学であると標榜するだけあって、心理学的な洞察には深さを感じさせるものがあり、なるほどなぁと感じ入りました

集中力を、感情(本能)に基づく集中力と、理性に基づく集中力に分け、前者を危険なものとして扱うよう、いろいろ細かく注意を喚起している

理性に基づく集中力を高めるプロセス(主に瞑想)には、必ず「楽しみ」が伴い、この楽しみに高い価値を置いている

逆に、宗教によくある苦しい修行は意味の無いものとして退け、宗教儀式など無価値と断ずる

抹香臭い仏教の解説書かなと思って読み始めたら、まったく違って、非常に理性的な本でした

(^_^;)

 

読書 「おかげまいり」と「ええじゃないか」

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おかげまいり」は、江戸時代に起こった伊勢神宮への集団参詣

数百万人規模のものが、およそ60年周期(「おかげ年」と言う)に3回起こった

ええじゃないか」は、特に最後の回(慶応3年・1867年)で発生した集団乱舞だが、これは明治元年の前年

著者は1912年生まれの京大出身の歴史学者なのだが、ガチガチのマルクス教信者のようで、階級闘争に結びつかないと価値を認めないようなところがあり、本書が刊行された1968年ころの時代精神(70年安保闘争のころ)が伝わって来る

観光旅行など多くの人には夢のような話だった江戸時代に、伊勢神宮めざして数百万人規模で「民族大移動」をしたという事実に驚く

伊勢神宮の近隣はもとより、遠く九州や東北地方からも、みんな歩いて伊勢をめざした

当時の人口(3000万人くらい)を考えると、長距離を歩ける者の3人に1人くらいが、民族大移動に参加したことになる

60年周期とすると、1867年の次は1927年(昭和2年)で、この時は金融恐慌など社会不安は大きかったが、「おかげまいり」は起きなかった

しかし、少し後に満州事変が起きて日中戦争に突入していくが、このころ日本軍は連戦連勝で、大日本帝国の支配地が広がることに熱狂している国民も少なくなかった

その次は1987年(昭和62年)で、バブルの真っただ中、日本中が狂喜乱舞した時代

さらに次は2047年ですけど、それまで生きてるかな~?

(^_^;)

 

▲伊勢神宮

 

映画「ええじゃないか」

 

▲バブルのころのジュリアナ東京

お姉さんたち 今は還暦くらい?  (^_^;)

 

▲最近の伊勢神宮への集団参詣

 

読書 「世間」とは何か

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ドイツ中世史が専門である著者が、万葉集から現代にいたる日本文学の作品を渉猟し、その中に現れた「世間」のあり方について考察している

その中では、兼好の「徒然草」と、夏目漱石における世間が特に面白かった

世間は現在でも、日本人の行動や考え方、あるいは生き方まで規定しているが、山本七平の言うように空気のような存在なので、対象化して分析するのが非常に難しい

多くの日本人は、多かれ少なかれ世間の中での生き難さや世間への鬱陶しさを感じ、そこから逃れようとしているかのようにも見えるが、実は世間には生き易さの側面も大きく、なかなか簡単に捨て去ることも出来ない

世間での生き難さが先鋭化した一部の人は、かつては出家したり、隠者となって人里離れた場所に庵を結んで隠棲したりして「脱世間」してきた

本書に取り上げられている作品のほとんどは、それらの脱世間した人々が生み出してきた

親鸞の作った浄土真宗の集団は、彼が生きていた時代には、世間を拒否した脱世間社会を構築したかに見えたが、やがて世間の原理が徐々に浸透して、今では脱世間の特質はほとんど失われているという

本来なら世間を対象化して分析すべき学者の社会が、まさに世間の典型であって、著者は余り関わり合いたくないなどと嘆いている

21世紀の現在、十代、二十代がよく利用しているSNSにも、世間は深く値を張っている

炎上事件とか、辛辣な投稿を苦にした自殺事件なども頻繁に起きており、日本人と世間主義文化の根の深い結びつきを感じる

(^_^;)

 

読書 こころの旅

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人間の生命の発生(受精)から終了(死)に至るまでの精神(こころ)の変化を、非常に分かりやすい文章で綴っており、精神科医である著者の代表作とされている名著です

特に老年期の部分は、これからの我が事として、切実な関心を持って読みました

本文200ページくらいで人の一生を追っているので、専門的に突っ込んだ議論は無いが、60歳前後の著者が自分の人生をも振り返りながら、まさに「自分の言葉」でもって書かれている

「病について」の章は、人生の各時期とは離れて、病気で肉体的苦痛や死の恐怖に直面している人の精神面について書かれている

実は今日、左手小指の骨折の手術を受け、その麻酔が切れた痛みをジンジン感じながら、肉体的苦痛についての文章を読みました

(^_^;)

肉食は精神の健康に良い?

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私は焼肉ダイスキなので うれしい研究結果です

  ビールは精神の健康に良い!

という研究結果も出ないかなぁ  (^_^;)

 

近年では

「動物の命を人間のために奪うべきではない」

「肉を食べることは健康に悪い」

といった思想や考えから、宗教以外の理由で菜食主義を選択する人々が増えています。

そんな中、アメリカのチームが行った研究では、

「菜食主義者は、肉を食べる人と比較して

 精神的な問題を抱えている可能性が高い」

という結果が明らかとなりました。

ただし、

「相関関係は因果関係を示すものではなく、私たちは今回の結果についていくつかの説明を付けることができます。たとえば、

『精神疾患に苦しんでいる人は、自己治療の一種として食事内容を変えることがある』

『厳格な菜食主義者の食事は、栄養素の欠乏を引き起こして精神疾患のリスクを増加させる』

『摂食障害を抱えている人は、自身の障害を隠すために菜食主義を利用している』

『動物の苦痛に対して非常に敏感だったり動物の苦しみに注目していたりする人は、うつ病や不安の両方を抱えやすい』

といった可能性があります」

と、今回の研究を進めたDobersek准教授は指摘している。

詳細はここをクリック

 

読書 エリス「論理療法」

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論理療法とは、1955年に著者エリスによって始められた、不安や悩みを解決する心理療法の一種

間違った(ナンセンスな)信念や思い込み(その多くは「~ねばならない」という表現をとる)を正すことで、感情や行動の改善を目指す

思考(理性)に重点を置いた、非常に理知的な心理療法であり、自己分析力のあるインテリ向き

フロイト流の精神分析を重症者向きとすれば、比較的軽症者向きと言えるかもしれない

古代ギリシアのストア哲学(エピクテトスなど)を現代風にアレンジした感じ

「療法」と名付けられているが、精神疾患の有無に関係なく、理性的な生き方の教科書としても十分に役に立つと思う

大判328ページ、普通の本の600ページ分くらいあるが、非常に読みやすい

(^_^;)

 

映画 ドリームハウス

出版社勤務を辞めて、愛する妻子と新居で小説を書く生活を始めた主人公

しかしその新居には、忌まわしい過去があった、というサイコ・スリラー

アマゾン・レビューの評価は非常に高いのだが、イマイチ楽しめなかった

(^_^;)

読書 孤独の研究

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25年前にも読んだ本の再読

多くの天才たちの人生を「孤独」という視点から解説している

ある種の才能や感覚が突出すると、共同での生活や作業が苦痛になる

ソローは「天国の寄宿舎より、地獄で一人で暮らしたい」と言った

巨万の富を孤独の確保につかったピュリツァーやヒューズには、滑稽な悲劇性がただよう

著者が孤独の音楽の最高峰とするのは、グレン・グールドのゴールドベルク変奏曲、冒頭のアリア

(^_^;)

 

 

読書 町沢静夫「天才の法則」

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精神科医が過去の天才(政治家、文学者、思想家など)を精神分析する

ニーチェ、リルケ、フロイトという3人の天才に深くかかわった女性ザロメに興味がわいた

ヒトラーやスターリンは明らかに精神病者だが、多くの理性的な人々が、このような精神病者に簡単にダマされてしまった歴史的事実が恐ろしい

習近平や金正恩の精神分析もして欲しい!

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