著者は三菱電機の海外プラント部門にいた人で、大学の講師もしている
セレンディピティとは何か?に関するエッセイ集、といった感じの本
発明や発見の背後に「偶然」が存在し、その偶然に出会ってその意味するところを察知した「察知力」を絡めて、セレンディピティを「偶察力」と和訳している
ルネサンスの頃の逸話から、セレンディピティという語が生まれ、発明発見やイノベーション、パラダイムシフトに大きな関連を持つと認識されてゆく歴史をたどっている
日常の生活や社会を維持してゆくには「常識」が大きな役割を果たしている
しかし、この常識が進歩の妨げになることも少なくない
そのとき、常識を打破するきっかけになるのが偶然であるので、偶然とは「神からの贈り物」であるとする
かつて空を飛ぶためには、「はばたかなければならない」というのが常識だった
しかし、鳥が羽根を動かさずに空を滑空しているのを偶然に目撃し、固定翼でも空を飛べるのではないかと察知し、固定翼飛行機の開発を考えた日本人がいた
このとき日本陸軍は頭が固くて(セレンディピティが乏しくて)開発費用を出し惜しみ、そのせいで固定翼飛行機の実用化では、ライト兄弟が世界初の椅子に座ることになった
セレンディピティの有無は、個人の運命だけでなく、国家の盛衰をも左右する
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